不快指数と体感温度
何でもかんでも数で表現するのが好きな国民性なのでしょうか。米国で考えられた不快指数は過ごしやすさを数値化します。
人は汗をかいて調整する仕組みを使っています。つまり、汗の蒸発が気化熱を奪って結果的に体温上昇を抑えることができるわけです。もし湿度が高かったらどうなるでしょう。汗の蒸発が起こりにくくなり体温を下げることができません。温度と同じくらい湿度が大切ということになりますね。
不快指数は温度と湿度の組み合わせで計算される指数で、以下の表が数値と感じ方の変換表です。
不快指数 |
感じ方
|
---|---|
55以下 |
寒い
|
55~60 |
肌寒い
|
60~65 |
何も感じない
|
65~70 |
快い
|
70~75 |
暑くない
|
75~80 |
やや暑い
|
80~85 |
暑くて汗が出る
|
85以上 |
暑くてたまらない
|
そして、温度と湿度から計算される不快指数の数式は以下のように定義されています。
逆ポーランド記法に変換するのは容易で、プログラムは次のとおりです。複雑なものではないので、一行プログラムになります。コピーしてrpnファイルにしてください。ここでは、ファイル名を"di.rpn"とします。
===(この行の1行下からコピー)===
#h #t .81 @t * .01 @h * .99 @t * 14.3 - * + 46.3 +
===(この行の1行上までコピー)===
プログラムの使い方は簡単です。DOSプロンプトを起動してから、温度(℃)と湿度(%)を指定してrpnファイル"di.rpn"を読み込むだけです。
79.07
79.1が答えです。上の変換表によるとやや暑いという感じ方になりますね。ここでちょっと湿度を上げると汗が出始めます。
80.61
不快指数80.6は、暑くて汗が出るということですから、体感的にも合っている感じがします。ちなみにrpn式は以下の使い方でも答えは同じになります。
80.61
湿度で変わる体感温度
さて、人間の快適さの感じ方に湿度が影響することは確かですが、それがどの程度の温度に感じるのかを示す指標があります。その一つがミスナールの体感温度です。
体感温度の計算は、風がない状態の体感温度(主に湿度が影響)を表した式で、蒸し暑さを主に対象とするという意味では不快指数に似ています。rpnプログラムは次のとおりです。プログラムの部分をコピーしてテキストファイルに貼り付けてください。ファイル名は"missenar.rpn"とします。
===(この行の1行下からコピー)===
#h #t @t 2.3 n @t 10 - * .8 @h 100 / - * -
===(この行の1行上までコピー)===
使い方は温度(℃)と湿度(%)を指定して、rpnファイルの"missenar.rpn"を読み込むだけです。不快指数と同じですね。計算結果は温度で出てきます。下の例は温度が30℃で湿度が55%の時の計算になります。
27.8261
27.8℃に感じるそうです。では、不快指数では暑くて汗が出る感じ方になる温度30℃と湿度65%ではどうなるでしょう。
28.6957
今度は28.7℃です。体感29℃ですか…どうも不快指数の方が感じ方としてピンと来るように思います。ところで、体感温度は湿度が20%下がると1℃下がると言われていますが、このプログラムではどうなるでしょう。
26.9565
>rpn 28.6957 26.9565 -
1.7392
1.7℃下がって感じるようです。実際は、体感温度の式は適応できる限界がありますから(過度に寒い・暑い環境では数式が意味をなさない)、この程度の計算結果の違いは許容できる範囲ではないでしょうか。
風速で変わる体感温度
体に感じる温度に影響を与えるもう一つの要因が風です。大体、1m/s(秒速1メートル)の風で1℃体感温度が下がると言われています。すると風を考慮した体感温度を表す数式もあるような気がしますが、それが次に紹介するリンケの体感温度です。
計算式は日差しがない状態の体感温度(主に風が影響)を表していて、主に寒さを対象にしています。rpnプログラムは次のとおりです。プログラムの部分をコピーしてテキストファイルに貼り付けてください。ファイル名は"linke.rpn"とします。
===(この行の1行下からコピー)===
#v #t @t 4 @v r * -
===(この行の1行上までコピー)===
このプログラムで、温度が30℃で風速が1m/sの時の体感温度を計算してみましょう。
26
一気に4℃も体感温度が下がるんですね。風は侮れないようです。
現実的な体感温度
暑い夏には扇風機は欠かせません。風を作り出す文明の利器にあたると涼しく感じます。体感温度を下げるのに大いに貢献してくれそうな、この扇風機ってどれくらいの風速なのでしょうか。1m/sで1℃下がるという1m/sってどれくらいの風なのでしょうか。
調べてみると、扇風機のスイッチ弱設定で3m/s弱、スイッチ強になると4m/sにもなります。風速は意外にあるんですね。すると、30℃でもスイッチ強の扇風機の前にいると、
22
22℃に感じます。涼しいわけです。
扇風機は気温と体温が同じになると効果がありません。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)では使用を控える温度を32℃としています(熱風を受けて熱中症を誘発する危険性あり)。基本的に気温が35~36℃になったら(体温と同じ)、涼しいところに退避するしかないわけですね。
ちなみに夏でも地球に優しいエアコン設定は28℃だそうです。湿度が60%あるとすると計算上、不快指数は77です。やや暑いですね。快適な状態にするためには温度をどれだけ下げればいいでしょうか。不快指数プログラムで計算すると以下のようになります。
77.032
>rpn 22 60 <di.rpn
68.608
どうやら不快指数70を切る快適ゾーンにするためには、22℃以下にする必要がありそうです。だからと言って、エアコン設定をそのまま22℃にすると電気代もバカになりませんから、風を利用して体感温度を下げてみましょう。
体感温度プログラムのリンケの式を使って試行錯誤してみると、以下のように大体2m/s強の風速でいいことになります。
21.9337
仮に湿度を一定に保つとすると、28℃から22℃にするためには扇風機を弱以下にすればいいわけです。エアコンにうちわ程度でも十分なのかもしれませんね。
実際に調べるとうちわの風速って2m/sなのだそうです。体感温度の計算から出した答えは案外いい線いってましたね。
結局のところ、体感温度は湿度が高いと暑く感じることと、風がないと暑く感じることがベースになっているようです。要は以下の図です。
湿度低い 湿度高い
体感温度(寒い) <----------------> 体感温度(暑い)
言われてみれば当然だということですが、それを数値として表現するという発想が面白いですね。
温度と湿度に関連して、暑さの危険性に関する記事が応用コーナーの熱中症対策は温度と湿度にあります。興味のある方は閲覧ください。
rpnプログラムを実行するには、rpn試用版かrpn標準版が必要です(バージョンの違いはこちら)。